JANOG58 NOC L2L3チームメンバーの曽山です。
さる6月6日、JANOG58 ホストのArista様により、NOCメンバー向けのVESPA勉強会を開催いただきました。
1. VESPAとは?
VESPA(Virtual Ethernet Segment with Proxy ARP)は、大規模WLAN向けに設計されたアーキテクチャです。EVPN/VXLANによる広域L2接続、ゲートウェイのマルチホーミング、APによるProxy ARPを組み合わせることで、高い冗長性とスケーラビリティを実現します。最大3万台のAPと50万台規模のクライアントを収容できます。
大規模なキャンパスネットワークにおいては、スマートフォンやIoTデバイスなどの増加に伴って、APに接続するクライアントのMACアドレスが急増しています。また、単にMACアドレスの数が増えているだけでなく、端末側でMACアドレスをランダム化する動きが進んでいます。プライバシー保護には効果的ですが、ネットワーク運用の観点では、端末をMACアドレスで識別しにくくなるため、認証やMAC ACLの運用が難しくなります。さらに、ゲートウェイ側では多くのクライアントのMACアドレスを保持しなければならないため、MAC/ARPテーブルが肥大化する課題があります。

2. EVPN/VXLANの活用
そこでVESPAでは、データセンタネットワーク等で広く用いられているEVPN/VXLANをキャンパスネットワークに応用し、キャンパス内の広い範囲に跨るL2ネットワークを構築します。APはVXLANトンネルを介してトラヒックを転送します。これにより、クライアントが異なるAPへ接続を切り替えた場合でも、MACアドレスおよびIPアドレスを継続して利用できます。APとVESPAゲートウェイ間はL3接続性があればよいため、柔軟なネットワークを設計できます。
一般的なWi-Fiネットワークの構築においては、アクセスポイントがコントローラに接続し、機器間でCAPWAPトンネルを張って管理を行うことが多いです。一方でAristaのAPは自律型が基本となっており、APでVXLANやEoGREを終端できるほか、SSIDごとに特定のトンネルにトラヒックを流すか、通常のローカルVLANに流すかを選択することも可能となっています。コントローラへの依存を抑えた構成をとれるため、運用時の複雑性を低減できます。
通常のVXLANでは、VTEP同士が相互に通信できることを前提に、トンネルを形成します。VESPAにおいては、APではEVPNを直接動作させておらず、APを収容するVESPAゲートウェイ群がEVPNコントロールプレーンを構成します。ゲートウェイはEVPNを用いてMACの学習情報を交換します。
ゲートウェイは複数台設けることができますが、各APがゲートウェイに接続する際にマルチホーミング技術が活用されています。APからのVXLANトンネルは、複数のゲートウェイがもつ共有のEthernetセグメントと接続されます。各ゲートウェイはActive/Activeで冗長構成をとれるため、耐障害性を高めながらネットワークを大きくスケールさせることが可能となります。
3. MRO
ここまで説明した技術によって広域なネットワークが構築できるものの、全てのクライアントのMACアドレスをゲートウェイで保持し続ける場合、ARPテーブルやMACテーブルが肥大化する問題が依然として残ります。これを解決するのが、MAC Rewrite Offload(MRO)です。MACアドレスとIPアドレスの対応をAP側でキャッシュし、クライアントからのARP要求に代理応答します。これにより、ARP要求のネットワーク全域へのフラッディングを抑制します。加えて、APはクライアントから送られてくるフレームの送信元MACアドレスを、自身のMACアドレスに書き換えて上位に転送します。そのため、上位のスイッチはクライアントごとのMACアドレスではなく、APのMACアドレスを学習すればよくなり、MACエントリ数を大幅に削減できます。
4. 勉強会の様子
勉強会においては、まずArista様よりVESPAに関するご講義をいただきました。
その後の質疑応答の時間では、参加者から活発な質問が寄せられました。特に、IPv6対応やポリシー制御の部分に関して、現状利用可能な機能について多くの質問が出ました。
JANOGで提供するネットワークにおいては、IPv6対応が必須となるため、当該機能への関心が特に高かったように思います。VESPAは現在も開発が進んでいる技術であり、今後さらなる機能の実装が予定されているそうです。将来のVESPA本格運用を見据えた、有意義な議論を交わすことができました。

4. 結び
筆者はそもそもEVPN/VXLANについて初めて学習する、というレベルでしたが、Arista様の詳細かつ明快なご説明により、ユースケースやプロトコル動作のイメージを明確につかむことができました。
JANOG58の会場ネットワークにおいても、VESPAの試験導入を検討しています。クライアント要件や構築予定のネットワーク構成、セキュリティの観点を総合的に考慮し、先進的でより効率の高いネットワークの提供を目指しています。
JANOG58は、7月15日-17日、愛媛県県民文化会館で開催されます。現地にお越しいただいた際には、ぜひ会場ネットワークにもご注目いただければと思います。
